二種類の高速電波バースト

Credit: Danielle Futselaar (artsource.nl)

高速電波バーストと呼ばれる未知の電波信号が天文学で大きな話題となっています。 高速電波バーストは遠くの銀河からやってくる事がわかっていて、繰り返しバーストを起こす「リピート型」と一度しかバーストを起こさない「単発型」が存在しています。 その正体は全く明らかになっておらず、これら二種類が物理的に異なる起源を持っているのかどうかが、その謎を解明するための大きな争点となっています。

私は、これら二種類の高速電波バーストが、(i) 明さ、(ii) バースト継続時間、(iii) 光度関数 (高速電波バーストの明さ毎に計算した数密度) の点で明らかに異なる事を初めて発見しました。 リピート型の高速電波バーストは単発型と比べて継続時間が長く非常に暗い事がわかりました。 また両者の光度関数も明らかに異なっています (図1)。 これらの結果はリピート型と単発型の高速電波バーストがそれぞれ異なる起源を持っていることを示唆しています。 また光度関数は高速電波バーストの起源を探る重要な手掛かりになります。 暗い高速電波バーストの光度関数は起源候補天体である、軟ガンマ線リピーター、Ia 型超新星、マグネター、白色矮星連星の数密度と一致している事もわかりました (図1)。 暗い高速電波バーストはこれらのうちのいずれかを起源としているのかもしれません。

図1: 高速電波バーストの光度関数 (明さ毎の数密度)。水平方向の破線は高速電波バーストの起源候補天体の数密度に対応しています。暗い高速電波バーストの光度関数は軟ガンマ線リピーター、Ia 型超新星、マグネター、白色矮星連星の数密度と一致しています。
図1: 高速電波バーストの光度関数 (明さ毎の数密度)。水平方向の破線は高速電波バーストの起源候補天体の数密度に対応しています。暗い高速電波バーストの光度関数は軟ガンマ線リピーター、Ia 型超新星、マグネター、白色矮星連星の数密度と一致しています。

これらの内容は英国王立天文学会月報 (Monthly Notices of the Royal Astronomical Society) に掲載されました。

Tetsuya Hashimoto, Tomotsugu Goto, Ting-Wen Wang, Seong Jin Kim, Simon C.-C. Ho, Alvina Y. L. On, Ting-Yi Lu, and Daryl Joe D. Santos, 'Luminosity-duration relations and luminosity functions of repeating and non-repeating fast radio bursts' , accepted by Monthly Notices of the Royal Astronomical Society, (2020).

橋本哲也
橋本哲也
助教 (NCHU)