SKA と高速電波バースト

Image credit: [The Square Kilometre Array]

高速電波バーストは系外銀河からやってくる謎の電波信号で、その正体は未だにはっきりわかっていません。 この正体を突き止める事が天文学で大きな話題となっています。 また、高速電波バーストは宇宙の再電離 (初期宇宙が中性から電離状態へと変化したその変わり目) やダークエネルギー (宇宙の加速膨張を司る謎のエネルギー) を明らかにする上でも大変有用であると期待されています。 そのためには数多くの高速電波バーストを見つける必要がありますが、これまでに検出されている高速電波バーストの数はたった 100 程度しかありません。 そのため、高速電波バーストを数多く検出できる次世代の電波望遠鏡が待ち望まれています。

The Square Kilometre Array (SKA) は次世代の大型電波望遠鏡計画で、これらの謎に取り組むことができる理想的な望遠鏡です。 SKA は 2020年代に本格運用が開始される予定で、SKA が将来どれくらいの高速電波バーストを検出できるのかが今大きな注目を集めています。 そこで私は 過去の研究 で導いた光度関数を用いて、 SKA が将来どれくらい多くの高速電波バーストを検出できるのかを計算しました。

Figure: SKA が検出する高速電波バーストの累積数。異なる色は高速電波バーストの異なる種族 (単発型とリピート型) を示しています。(a) と (b) はそれぞれ SKA の観測周波数である 0.65 と 1.4 GHz に対応しています。
Figure: SKA が検出する高速電波バーストの累積数。異なる色は高速電波バーストの異なる種族 (単発型とリピート型) を示しています。(a) と (b) はそれぞれ SKA の観測周波数である 0.65 と 1.4 GHz に対応しています。

私は SKA が年間 10^5-10^6 個の高速電波バーストを検出する事を明らかにしました。 初期宇宙で起こった再電離の時期においては、年間 10^2-10^4 (10-10^3) 個の高速電波バーストが赤方偏移6以上 (赤方偏移10以上) で発見されるはずです。 これらの数は、現在の高速電波バーストのサンプル数よりも遥かに多く、SKA が高速電波バーストそして現代天文学にブレークスルーをもたらしてくれると期待されます。 私はこれらの数が (i)高速電波バーストの起源、(ii)宇宙の再電離、そして (iii)ダークエネルギーを解明するのに十分な数であると期待しています。

これらの内容は英国王立天文学会月報 (Monthly Notices of the Royal Astronomical Society) に掲載されました。

Tetsuya Hashimoto, Tomotsugu Goto, Alvina Y. L. On, Ting-Yi Lu, Daryl Joe D. Santos, Simon C.-C. Ho, Ting-Wen Wang, Seong Jin Kim, and Tiger Y.-Y. Hsiao, 'Fast radio bursts to be detected with the Square Kilometre Array' , accepted for publication in Monthly Notices of the Royal Astronomical Society, (2020).

またこの論文は astrobites で特集されました。 'Focusing Squarely on FRBs with the Square Kilometre Array'.

橋本哲也
橋本哲也
助教 (NCHU)