一般相対性理論の検証

Image credit: [InformiguelCarreño (Own work) [CC BY-SA 4.0], via Wikimedia Commons]

アインシュタインの一般相対性理論は現代物理学と天文学の基礎となっています。一般相対性理論がどのぐらいの精度で正しいのかを検証する事は物理学並びに天文学における大きな課題の一つです。一般相対性理論には「弱い等価原理」と呼ばれる仮定があります。この弱い等価原理は言い換えれば、真空中の光の速度がその周波数によらず常に同じ値である事を意味します。もし弱い等価原理が破れていると、光の速度は周波数によってわずかに異なる事になり、異なる周波数の光の間にわずかなタイムラグが生じるはずです。そのようなわずかなタイムラグをどうやって検証すれば良いのでしょうか。

私は高速電波バーストを用いてこのタイムラグを強く制限する新しい手法を考案しました。高速電波バーストはわずか千分の一秒しかない電波パルスで、はるか遠方の銀河からやってきています。高速電波バーストまでの長い距離とその非常に短い時間スケールのおかげで、弱い等価原理を検証する理想の実験場として用いる事ができます。

もし弱い等価原理が破れている(異なる周波数での真空中の光速度が異なる)場合、この破れによって生じるタイムラグは高速電波バーストの到達時間の測定誤差の範囲内にあるはずです。というのも今のところ、観測的には有意なタイムラグは検出されていないからです (ここでのタイムラグは宇宙空間のプラズマによって生じるタイムラグを差し引いた後の事を指しています)。そこで、私はこの高速電波バーストの測定誤差を使って、弱い等価原理の破れに対する強い制限を加える事を提案しました。

図: 高速電波バーストを使って導かれた log Δγ に対する上限値(赤点: 今回の論文) と過去の研究で得られている上限値(黒色のマーカー). log Δγ はどれだけ精度良く弱い等価原理が確かめられているかという指標で、小さい方がより精密な検証である事を意味します。私は過去の研究に比べて三桁も精度の良い検証を行いました。
図: 高速電波バーストを使って導かれた log Δγ に対する上限値(赤点: 今回の論文) と過去の研究で得られている上限値(黒色のマーカー). log Δγ はどれだけ精度良く弱い等価原理が確かめられているかという指標で、小さい方がより精密な検証である事を意味します。私は過去の研究に比べて三桁も精度の良い検証を行いました。

図は log Δγ に対する上限値を表しており、log Δγ はどれだけ精度良く弱い等価原理が確かめられているかという指標です。私は高速電波バーストを用いた独自の方法で、過去の研究(黒色のマーカー)に比べて三桁も精度の良い検証(赤点)を行いました。一般相対性理論は10のマイナス21乗という、とてつもない精度まで確からしい事が明らかになりました。もしかしたら将来高速電波バーストによって一般相対性理論の先にある観測的証拠が見つかるかもしれません。

これらの内容は米国フィジカル・レビューD (Physical Review D) に掲載されました。

Tetsuya Hashimoto, Tomotsugu Goto, Daryl Joe D. Santos, Simon C.-C. Ho, Ece Kilerci-Eser, Tiger Y.-Y. Hsiao, Yi Hang Valerie Wong, Alvina Y. L. On, Seong Jin Kim, and Ting-Yi Lu, 'Upper limits on Einstein's weak equivalence principle placed by uncertainties of dispersion measures of fast radio bursts' , accepted for publication in accepted for publication in Physical Review D, (2021).

以下の論文もあわせてご覧ください。

Kaustubha Sen, Tetsuya Hashimoto, Tomotsugu Goto, Seong Jin Kim, Bo Han Chen, Daryl Joe D. Santos, Simon C. C. Ho, Alvina Y. L. On, Ting-Yi Lu, and Tiger Y.-Y. Hsiao, 'Constraining violations of the Weak Equivalence Principle Using CHIME FRBs' , accepted for publication in Monthly Notices of the Royal Astronomical Society, (2021).

この論文は’Medium’で特集されました。 'Testing Einstein’s Work Using Observations of Fast Radio Bursts' .

橋本哲也
橋本哲也
助教 (NCHU)